インプラントトラブルの相談事例
- 国際口腔インプラント学会 認定医
- DGZIインプラント認定医
- エルビウムデンタルレーザーアカデミー・アドバンス
- 日本口腔インプラント学会会員
- 近未来オステオインプラント学会 会員
インプラント治療は、歯を失った際、質の高い口腔機能を回復するための非常に有効な手段として、現在では多くの歯科医院で診療に取り入れられております。
しかしながら一方で、歯科医師のインプラント治療に対する知識や技術不足、患者さまへの説明が不十分であることから、さまざまなトラブルや失敗が起きていることも残念ながら事実です。
当院にも、他医院で行ったインプラントについての不具合やトラブルのご相談が多く寄せられておりますが、独立行政法人国民生活センターにも、インプラント治療に関する危害情報が毎年度60~80件程度寄せられているそうです。
内容を見ると、手術直後から痺れがとれない、治療前に患者の身体状態を確認せず施術されたなどインプラント治療指針に沿っていないと思われる事例のほか、噛み合わせが合わない、インプラントが脱離してしまったなどといったご相談も多くあります。
インプラント治療は高度な技術を要する手術ですが、患者側から歯科医師の技術は測ることは難しく、歯科医院選びの判断がしにくい現状があることも確かです。
そこで当院ではあらためて患者さまに対し情報提供するとともに、インプラントトラブルの未然防止・再発防止のため取り組んで参りたいと思います。
インプラント治療には、国が定めた「治療指針」があります
インプラント治療には、厚生労働省が定めた「歯科インプラント治療指針」のほか、公益社団法人日本口腔インプラント学会が定めた「口腔インプラント治療指針」など、安全にインプラント治療を行うためのガイドラインが存在します。
インプラント治療の検査法や診断、具体的な手順や安全管理のための基本事項などが細かく定められておりますが、インプラント治療を行っている歯科医院のすべてがこのガイドラインを準拠しているわけではないというのも、残念ながら事実です。
インプラント治療は非常に高度な技術と専門的な知識を必要とする外科手術ですが、歯科医師免許を持っている歯科医師であれば、他に特別な資格を必要とせず、誰でもインプラント治療を行うことが許可されているのです。
しかしながら、安全なインプラント治療を行うためには、一般歯科治療の知識と技術以外に専門性が要求されます。
歯科医師が、インプラント治療における治療指針を熟知しているかどうかを判断する一つの基準として、「専門医・認定医」制度というものもあります。
現在インプラントに関する学術団体は多数存在しており、それぞれの団体で「専門医、認定医制度」を設けておりますが、当院院長はそのうち、下記の団体に所属し認定を得るとともに、日々知識と技術の向上に務めております。
実際の相談事例
以下、独立行政法人国民生活センターに寄せられたインプラント治療に関する実際の相談事例をご紹介します。
※相談事例は相談者の申し出に基づくものです。
1)治療前の検査や確認が不足しており、治療指針に沿わないと思われる事例
【事例1】インプラント治療の相談に行った次の予約日にいきなり手術され、出血が止まらず入院した
ネットでみつけた歯科医院でインプラント治療の相談をし、費用と手術の大まかな説明を受け次の予約をした。
予約当日は、費用と手術の詳しい話を聞けると思っていたが、いきなり診察室で治療が始まり3時間かかり医院を出た。
約2時間後、口内から出血しはじめたため歯科医院へ戻った。
既にインプラントの仮歯を1本入れてあり、ガーゼを当てられ、痛み止めと化膿止めを処方され帰宅したが、出血が止まらず救急センターを受診し入院となった。
原因は今回のインプラント治療であるとの説明を受けた。
茨城県・50歳代・女性
【事例2】インプラント治療のリスクが上がる骨粗しょう症の薬を服用していたが治療された
数年前、歯科医師の勧めで健康な歯を抜き、すべての歯をインプラントにした。
昨年、定期検診を受けたときに、レントゲン画像をみた歯科医師から「何か薬を飲んでいるか」と聞かれた。
骨粗しょう症の薬を飲んでいると伝えると「自分の手に負えなくなった。大学病院に行ってくれ」と言われた。
歯科医師には手術前にお薬手帳を提出していたが、薬について聞かれたことはなかった。大学病院では「顎の骨が腐食し始めている」と診断された。
埼玉県・80歳代・女性
2)歯科医師の技術に問題があると思われる事例
【事例3】インプラント体の埋めこみが浅く外してやり直した
インプラント治療後に頭痛がして、顎が腫れ痛んだ。
歯科医師から勧められた耳鼻科を受診したが、耳や鼻には問題がなかった。
他の医療機関でインプラント体の埋め方が浅いことが分かり、外してやり直した。
東京都・70歳代・女性
【事例4】手術中から出血が止まらず「一日様子を見て」と帰されたが、鼻腔底が割れていることが判明して救急搬送された
上前歯にインプラントを入れるため、下顎から削った骨を上顎に移植する手術を受けた。手術中、鼻から回ってくる血液を飲み続けていた。
歯科医師に「一日様子を見て」と言われて帰されたが、出血が止まらないので病院に戻ったところ、前歯の上の鼻腔底を割ったため出血していたことがわかった。
歯科医師では止血できず、救急車で他院の耳鼻科に搬送され4日間入院した。
神奈川県・50歳代・女性
3)手術で生じた不具合への対処に問題があると思われる事例
【事例5】手術直後から痛みや痺れが生じたが経過観察とされた
去年、下顎にインプラントの土台を作る手術を受けた際に下顎や、唇、歯茎に強い痛みが生じ、それ以降、下顎等の痺れや頭痛が続いている。
歯科医師から痛みが引いてから手術を進めると説明され、1カ月に1回ほど通院して経過を見たが、症状に変化はなく先が見えない状況である。
東京都・30歳代・女性
【事例6】インプラントで蓄膿(ちくのう)を起こしていたのに対処されない
インプラント治療を受け、上の歯に仮歯を入れたが痛みがひどく、柔らかいものも噛めず食べられなくなった。
歯科医師は「歯茎が固まるまでがまんするように」というばかりで処置してくれなかった。
セカンドオピニオンを求めたところ「鼻の空洞にインプラントが刺さり蓄膿になっている。早くやり直さないと骨がだめになる」と言われた。
埼玉県・50歳代・女性
4)日頃の口腔清掃や定期検診が重要な理由が説明されていない事例
【事例7】定期検診が重要な理由を説明されずデメリットを認識していなかった
自宅近くの歯科医院へ行き、「丈夫な骨だから、大丈夫」と診断されたので、インプラントにした。
デメリットについての説明は何もなかった。3本のうち2本が抜け、抜けた箇所の顎の骨が半分溶けているとわかった。
定期検診に行かなかったが、医者からは「定期検査に通うのは常識だ。体質によっては骨が溶けることがある。」と言われた。
事前にきちんと説明を受けていればこのようなことにならなかった。
埼玉県・40歳代・女性
【事例8】定期検診を受けていたがインプラントが抜けてしまった
月に1回ほど定期検診を受けていたが、数年前に入れたインプラント6本のうち上の4本が抜けてしまった。
自分はインプラントを入れられる状態であったのか疑わしく、インプラントが歯周病になりやすいことも知らなかった。
ぐらぐらして出血し始めた際に相談したが、歯科医院長は待ってほしいと言うだけで5カ月間何も指示はなく、今は離れた大学病院に通っている。
福岡県・70歳代・女性
5)治療をどのように継続すれば良いのかわからないという事例
【事例9】紹介状を書くので好きな医療機関へ行けと言われたがどうすれば良いのかわからない
骨が薄いため骨を調整しながら6本インプラント治療をすると説明された。
手術1週間後あたりから膿が出始めた。眼球を抑えても膿が出る。2回目手術後も膿は止まらず、治ると言われ2カ月が過ぎたところで大学病院でもいいから好きなところに行け、紹介状を書くと言われた。
どうすれば良いのかわからない。
埼玉県・50歳代・女性
【事例10】麻痺を生じ治療を続けるのが不安になったがどうすれば良いのかわからない
歯茎の骨が薄いため、下顎の一部を切開して皮膚をインプラントする箇所へ移植したが、下顎あたりの神経が麻痺して感覚がなくなった。歯科医師に話すと「神経はいつ戻るかわからない」と言われ、このクリニックで治療を続けるのは不安である。
どうすれば良いのかわからない。
神奈川県・60歳代・女性
患者さまへのアドバイス
インプラント治療を受ける場合は情報を収集し、治療前には歯科医師に口腔内および全身の状況を確認し、治療方法や費用、リスク等に関する説明を求めましょう
インプラント治療は患者アンケート結果からも満足度の高い治療法ですが、現在のところ、まだ施術する歯科医師のスキルや知識に差があることが伺えます。
インプラント治療指針にもあるように、インプラント治療は切開や顎骨への加工を伴う外科手術であり、治療が可能か検討するためには、口の中の環境や、顎骨や全身の状態の確認が欠かせません。
口腔内のみならず、基礎疾患(糖尿病、骨粗しょう症、貧血、高血圧症など)や服薬などを含めた全身状態の把握が重要となります。
また、インプラント治療は、そのほとんどが保険が適用されない保険外治療(自由診療)となり、医療費が全て自己負担となるため費用負担が高額です。成功の可能性や治療期間が長期にわたるなどのデメリット、治療後のメインテナンスの重要性等の説明を求め、治療費や治療方法の記録をとっておきましょう。
インプラント治療で不具合が生じた場合は、他の医療機関への相談も検討しましょう
症状によっては神経の損傷など、迅速な対応が必要なケースもあります。施術を受けた医院で対応されない場合は速やかに歯科大学や大学の歯学部の附属病院、口腔外科専門医等を受診しましょう。
また、不具合が長く続いて解消されない場合も他の歯科医療機関に相談することもひとつの方法です。
問題が発生した場合は、各地にある保健所、医療安全支援センター、歯科医師会、消費生活センター等に相談することもできます。
当院でも、セカンドオピニオンを受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
インプラントを長持ちさせるには、自分自身での適切な口腔清掃と定期検診やメインテナンスが欠かせません
インプラントは比較的予後の良い治療とされていますが、インプラント周囲炎や糖尿病や骨粗しょう症などにより失われるリスクがあります。
特にインプラント周囲炎は、初期症状として痛みがないため、メインテナンス時に歯科医師などが見つけるか、患者がなんとなくおかしいと訴えることで見つかることから気づくため、処置が遅くなる傾向にあります。
歯科医師の指導の下、自分自身で適切な口腔清掃を行うとともに、定期検診を必ず受けましょう。糖尿病や骨粗しょう症など、加齢とともに全身状態に問題が生じ、症状の進行や服薬によってはインプラントを失うリスクが高まることがあることから、定期的にインプラントのメインテナンスを受けることは非常に重要です。